UBERがGrabに東南アジア事業売却を計画。ミャンマーのタクシー配車に与える影響は?

ミャンマーのタクシー配車サービスでしのぎを削る、GrabとUBERに関して2月16日に大きなニュースが流れた。

「UBERが東南アジア事業をGrabに売却する準備を進めている」といった関係者の話が発祥となった報道だ。
UBERはこれまでも、2016年には中国事業を滴滴出行に売却し、2017年にはロシア事業を競合に売却している経緯もある。現在、2019年の上場を目指しており、事業基盤を固めるべく事業売却も積極的に行っている印象が強い。

この2社はいずれも、日本のソフトバンク社から大型の出資を受けている。ソフトバンクは、インドやブラジルでも配車サービスを提供する会社に大型の投資をしているなど、配車サービス市場に大きな影響力を持っている。今回の経営判断の背景には、ソフトバンクの影響がある点も見逃せない。

2018年1月、UBERの発行済株式の約15%をソフトバンクを筆頭とした投資連合が77億ドルで買い付け、単独でも12.5億ドルを出資した。これによりソフトバンクはUBERの筆頭株主となり、発言力を持つこととなる。

 

ソフトバンクは、以前からGrabにも出資している。2014年に2.5億ドル、2015年9月に7.5億ドルの出資を受け、2017年7月にも中国の滴滴出行とソフトバンクの共同による20億ドルの投資を受けている。
2社とも、ソフトバンクの存在を無視できないほどの出資を受けていることがわかるだろう。

Grabは、ミャンマーにおいても事業を大きく拡大中で、2017年8月に「今後3年で1億ドルを投資する」と発表している。

2018年からはマンダレーでグラブバイクのサービスを開始し、ミャンマー国内での事業拡大にも積極的だ。配車サービス激戦区のヤンゴン市内ではUBERをはじめとした同業他社を押さえ、トップの地位を築きつつある。

GrabやUBER進出前から配車サービス事業を展開していたHelloCabs、OWAY RIDEは、技術面・資金面の両面から、かなり厳しい戦いを強いられているのが現状だ。

仮に、GrabがUBERの東南アジア事業を買い取る事になれば、ミャンマー国内では、一社独占に近い状態になってしまう。
現在は、Grab対UBERの顧客獲得競争によるプロモーションの恩恵もあり、タクシー価格は以前に比して割安に感じる事も少なくない。
しかし、Grabの寡占状態となれば、市場原理が働かず、価格に歪みが生じ、タクシー価格の高騰といった事態が起きかねない。そうならない事を願うばかりだ。

 

Grabは、2017年12月にカンボジアでも事業を開始し、現在では東南アジア8ヶ国、156の都市でサービスを展開している。合計で210万人のドライバーを抱え、アプリは7,200万ダウンロードを超える。2017年7月時点のGrabのサービス展開都市数は65だが、この半年で凄まじい勢いで事業を拡大している。
東南アジアにおける、配車サービス市場は2015年に25億ドルの規模だったが、2025年までに131億ドルに膨らむ、との予測データもある。

 

ゲストライター:桂川融己