タイ→ミャンマー送金がスピードアップ ― でも、それで十分か?
KBZ Bankは2026年5月15日、傘下のモバイルウォレット「KBZPay」がタイの「TrueMoney Wallet」と提携し、タイで働くミャンマー人労働者がリアルタイムで母国に送金できるようになったと発表した。ミャンマー国内のKBZ Bank支店やKBZPayセンターでは、受取人が手数料なしで引き出せるという。一見すると、フィンテック業界にありふれた「提携発表」の一つに過ぎないようにも見える。しかし見過ごせないのは、これがこの3年間で3件目となる、タイ→ミャンマー間のデジタル送金提携だという点だ。この繰り返しのパターンこそが、個々の提携内容以上にミャンマー経済の今を物語っている。 なぜこの送金ルートが重要なのか タイに滞在するミャンマー人の数は、決して小さな数字ではない。東南アジアでも有数の規模を持つ越境労働者人口である。タイの国際移住機関(IOM)関連の報道によれば、2026年1〜4月だけでタイ・カンチャナブリー・ラノーン・チェンマイなどの国境検問所を通じて、約68万7,000人のミャンマー国民がタイに入国したという。同じ報道で引用されているタイのコンサルティング会社Happioの調査では、現在タイに居住するミャンマー国民は約400万人にのぼり、その年間消費額は2,210億バーツ(約67億米ドル)以上、うちバンコク在住者だけでも52万人を超えるとされている。 この一人ひとりが、送金サービスの潜在的な顧客だ。これまで母国への送金手段は、非公式かつ手数料負担の大きいものが主流だった。ホンディ(非公式の送金ブローカー)ネットワーク、バス運転手への現金の託送、あるいは手数料の高い両替・送金窓口などである。ただでさえ多くない賃金から、知らぬ間に一定の割合が差し引かれてきた。モバイルウォレット同士の提携は、こうした非公式なルートから資金を、双方が把握・追跡でき、いずれは規制も及ぶデジタルなレールへと引き寄せようとする試みだと言える。 3年で3件 ― 同じ送金ルートをめぐる競争 KBZPayとTrueMoneyの今回の提携は、突然生まれたものではない。少なくとも2023年から続く、次のような流れの延長線上にある。 2023年8月 ― KBZPayはタイのカシコン銀行(Kasikornbank)のモバイルバンキングアプリ「K PLUS」と提携し、アプリ間送金でKBZPayウォレットへ直接送金できるようにした。この提携では、1件あたり10万〜500万チャット、ATM引き出し手数料0〜0.5%、代理店・センター引き出し手数料300〜7,800チャットという具体的な数字が公表され、2023年10月末までは手数料無料の promotion 期間も設けられていた。 2025年8月 ― TrueMoneyは、KBZPayの競合であるAYA […]



